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東京高等裁判所 昭和40年(行コ)20号 判決 1966年3月22日

アメリカ合衆国フロリダ州デイトナビーチ

サウスハルフアツクスドライブ二三二〇

控訴人

アンナ・フレーザー・ホーキンズ

右訴訟代理人弁護士

エルマー・イー・ウエルテイ

右訴訟復代理人弁護士

松尾敏夫

東京都千代田区大手町一丁目五番地

被控訴人

麹町税務署長

伯野三省

右指定代理人

山田二郎

山口三夫

三輪正雄

横山義男

みぎ当事者間の標記事件について、つぎのとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人訴訟代理人は、本件口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したものとみなされた控訴状の記載によれば、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和三七年一二月八日付でした控訴人の昭和三四年度分所得税に関する決定は、これを取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求める趣旨と解される。被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用、認否については、原判決の事実摘示と同一であるから、これ(原判決別紙中、請求原因および「被国の主張」と題する部分)を引用する。

理由

控訴人の主張するところは、要するに、アメリカ合衆国に居住する控訴人は、日本国内に在る不動産の譲渡による収益について、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(以下日米所得条約という。)第八条の規定により、日本国の課税に服するか否かの選択をなしうるものであるところ、控訴人はこれに服する旨の選択をしていないから、日本国の課税に服する義務がない、というにある。

しかしながら、当裁判所は、日米所得税条約第八条の規定は、控訴人が主張するように、一方の締約国に居住する者は、他方の締約国内にある不動産の譲渡所得につき、他方の締約国の課税に服するか否かを選択することができる旨を定めたものと解すべきでなく、控訴人は、日本国内の不動産の譲渡による所得について日本国に対し納税義務を負うものであり、被控訴人の控訴人に対する所得税に関する本件決定処分は適法であると判断する。その理由は、原判決の理由に説示するとおりであるから、これを引用する(但し、原判決三枚目表三行目に「permarent」とあるのは「permanen」に、同末行に「解決」とあるのに「解釈」にそれぞれ訂正する。)。

よつて、控訴人の請求は理由がないものとして棄却されるべきものであり、これと同旨の原判決は相当であるから、当裁判所は本件控訴を棄却するものとし、民事訴訟法第三八四条。第九五条、第八九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中西彦一郎 裁判官 外山四郎 裁判官 泰不二雄)

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